確か、私が初めて読んだ浦部はいむさんの作品は「僕はトイレが怖いんです。」だったと思う。
その時、「こんなに優しい作品を描く漫画家さんっているんだ」と思ったのを覚えています。
絵柄からは想像出来ない、ちょっと残酷な表現だからこそ見えてくる人間の優しさ。
そんな作品を多く描かれている漫画家の浦部はいむさんについて紹介したいと思います。
この記事の目次
プロフィール
出典:Twitter
名前 :浦部はいむ(うらべ はいむ)
生年月日:不明
出身地 :不明
職業 :漫画家
略歴
- 2017年、「僕はトイレが怖いんです。」が第80回小学館新人コミック大賞青年部門で入選
- 2018年、「外で飲む缶コーヒーはカッコイイ。」が第23回龍神賞であさりよしとお賞受賞
- 2019年、「あ、夜が明けるよ」「僕だけに優しい君に」の単行本発売
- 2020年、「高校生を、もう一度」の単行本発売。「あの人は血を求めてしまう」連載開始
- 2021年、「あの人は血を求めてしまう」連載終了。「黒猫おちびの一生」連載開始
漫画家としてデビューするまで
●高校中退と恩師の言葉
15歳の頃に通っていた高校を中退し、それから約4年間は工場で働いていたが、このままでは良くないと思い他の会社に面接に行くも、最終学歴を指摘されることが度々あった。
そのため、19歳から定時制高校に通い始めるも、学校が終わればすぐに居酒屋でバイトという生活になり、何もかもうまく行かずに自暴自棄になって、バイトも辞めてしまう。
そこで「自分が何かを人に褒められたことがあっただろうか」と考えるようになり、小学生時代の担任の先生が、よく絵がうまいと褒めてくれていたことを思い出す。
昔から絵も漫画も描いていたが、ある日、親から「オタクな子供はイヤ」と言われてから描くことから遠ざかっていた。
それでも、担任の先生が自分の絵を褒めてくれていたこと、自分自身も描いていて楽しかったことに気がつく。
●友人からの連絡
恩師とのことを思い出してからは「何をしてもうまくいかないなら、自分の好きなことを本気でしよう」と考えた。
しかし、イラストレーターのアルバイト募集に応募し、面接してはうまくいかない生活を続けていた。
そんな自分自身もどん底だった頃、友人から「自殺しようと思う。死ぬ前に会って欲しい。」と連絡が来る。
そして会った友人に自分の描いた漫画を読んだもらったところ「絶対に漫画家になれる」と力強く言われる。
普段は毒ばかり吐いているタイプの人だった友人だったため、きっと本心なのだと感じ、漫画を本気で描いてみようと背中を押された。
※その友人とは、現在は交流はないが、幸い生き続けてくれているようです。
●Twitterで漫画投稿をスタート
20歳の頃に漫画専用のTwitterアカウントを作る。
そして、38pの読み切り作品「100個の願い」を『ジャンプルーキー』にアップロードした。
初めて描いた読み切り漫画を貼っていく。四年前の漫画。これ描いてからがが始まりだったんだ。「100個の願い」 pic.twitter.com/kbUOlff6fs
— 浦部はいむ🌃 (@urabehaimu) January 20, 2019
すると、プロとして活躍されている漫画家も含め、Twitterアカウントを何人もの方にフォローされる。
タイムラインは漫画の情報で埋め尽くされ、そんなつぶやきを眺めているうちに、世の中には色んな漫画があり、デジタル作画というものもあることを知る。
そして「もっとこんな話を描きたい!」という気持ちが芽生え始め、この頃から本気で漫画家を目指す。
漫画家としてデビュー
●コミックサイト「COMIC MeDu」での連載
2018年7月、オンラインのコミックサイト「COMIC MeDu(めづ)」にメールで作品を応募した結果、『僕だけに優しい君に』の連載が決まる。
『MeDu(めづ)』というのは「愛づる」から来ており、”作り手の「愛」が溢れる作品をノンジャンルで届ける”というコンセプトに惹かれていた浦部さんは、連載を持てたことがとても嬉しく、もっと漫画をうまく描きたいと思うようになる。
●Twitterに投稿した漫画がバズり単行本に
2019年1月、『震えてる??』という作品を投稿し人気が出る。
ホラー漫画、友情モノです。 タイトルは「震えてる??」 pic.twitter.com/wY6vRV2d3i
— 浦部はいむ🌃 (@urabehaimu) May 13, 2019
この漫画をきっかけに、Twitterのフォロワーが一週間で7000人も増え、KADOKAWAのコミックビームからTwitterにアップした漫画の単行本化の話が来る。
そして、初単行本である『あ、夜が明けるよ。』を発売するに至ります。
浦部はいむさんの書籍
あ、夜が明けるよ。
著者 :浦部はいむ
編集 :コミックビーム編集部
発行 :株式会社KADOKAWA
初版発行:2019年5月11日
僕だけに優しい君に
著者 :浦部はいむ
編集 :今 秀夫
発行 :株式会社ジーオーティー
初版発行:2019年7月14日
高校生を、もう一度
著者 :浦部はいむ
編集 :小林千奈都
発行 :株式会社イースト・プレス
初版発行:2020年10月25日
あの人は血を求めてしまう
著者 :浦部はいむ
編集 :今 秀夫
発行 :株式会社ジーオーティー
初版発行:2020年11月12日
連載中の作品
黒猫おちびの一生
新いつき、45歳・独身。
職場では若いバイトからも舐められ、仕事の過労は溜まり、古アパートに一人暮らし…
帰宅後の晩酌が唯一の楽しみだったが、それが原因で寝ゲロで死んでしまう。
目覚めた彼は、なんと黒猫に転生していて…!?
人には人の、猫には猫の悩みや苦労があるんだなぁと思える作品。
この記事を書いてる時点(2022/02/06)で、第7話まで描かれていて、COMIC MeDuで好評連載中です。
個人的に、どの漫画よりも更新が楽しみな作品です。
こちらから無料で読むことが出来ます。
書籍化されていない浦部はいむさんの作品
まだ書籍化はされていませんが、Twitterで公開されている短編集などを紹介させて頂きます。
どの作品も浦部はいむさんの色が出ていて素晴らしいものばかりです。
出来るだけ時系列に並べていますが、誤りがあればごめんなさい _(._.)_
※単行本に掲載されている作品は除外しております。
自由の星
四年前に描いた物です。「自由の星」 pic.twitter.com/tEAiM3zmY5
— 浦部はいむ🌃 (@urabehaimu) January 20, 2019
思い出は31日に。
「思い出は31日に。」① pic.twitter.com/zbSbiXESb0
— 浦部はいむ🌃 (@urabehaimu) October 29, 2017
バレンタイン
去年描いたものですが バレンタイン漫画です。 pic.twitter.com/nhiAsH5f2q
— 浦部はいむ🌃 (@urabehaimu) February 13, 2020
素敵な笑顔の裏
「素敵な笑顔をしてる人ほど死にそうなぐらい辛かったりするんかな」【素敵な笑顔の裏】 pic.twitter.com/dto4xa8hdG
— 浦部はいむ🌃 (@urabehaimu) May 8, 2019
蜘蛛物件
家賃一万五千円のハイツに住み始めたら… タイトル「蜘蛛物件」 pic.twitter.com/SvBt065Vjh
— 浦部はいむ🌃 (@urabehaimu) May 22, 2019
忘れられることが一番
仕事辞めて無職の引きこもりになった夏 タイトル「忘れられることが一番」 pic.twitter.com/NZoWlm0fCs
— 浦部はいむ🌃 (@urabehaimu) August 26, 2019
カクゴの違い
30代無職男性が同窓会に行った時の話です。タイトルは「カクゴの違い」 pic.twitter.com/OKF7uuJFs6
— 浦部はいむ🌃 (@urabehaimu) June 12, 2020
ワタシというめいわく
私というメイワク pic.twitter.com/SVEI3kodry
— 浦部はいむ🌃 (@urabehaimu) September 10, 2020
消えるおまじない
「消えるおまじない」 pic.twitter.com/jNBROHRzQg
— 浦部はいむ🌃 (@urabehaimu) May 10, 2021
まとめ:浦部はいむさんはあなたにそっと寄り添う作品を描く漫画家だ
私は浦部はいむさんの作品は全て読んでいて、単行本も所有しています。
浦部はいむさんの作品は、絵柄からは想像できないような残虐な表現だったり、心が締め付けられるような描写が多くありますが、一貫して感じるのは「人の優しさ」なんですよね。
でも、ただ優しいだけではなくて、登場人物は皆、不安を感じていたり、葛藤していたり、悩んでいたり、、 そんな、生きていれば誰でも感じたことのあるネガティブな感情を包み隠さずに描いている。
人は一人では生きていけないとよく言うけれど、本当にそうだと思わせられる。
私も一人は好きですが、独りはどうかと聞かれれば、やっぱり誰かと話したいし一緒に居たいと答えます。誰だって優しくされたいし、優しくしたいんですよ。
自分が、誰でもいい存在ではなく、誰かにとって必要な存在になれた時、とてもうれしく感じるのです。
浦部はいむさんの作品は、生きることに疲れた人や、なんかもういいやってなっているけど、本当は優しくされたいと思っている人、そんな人の心にそっと寄り添ってくれる。
浦部はいむさんは、そんな複雑な人間の感情を悲観的にならずに優しく描いてくれる漫画家さんです。
最後に、浦部はいむさんはインタビューで次のように語られています。
――浦部さんはこれからどんな漫画を描き、どんな漫画家になりたいと考えているのでしょうか。
自分は漫画や映画でも「人間の闇、社会の貧相、底辺などをテーマにした作品」を好んでいるので、自分自身もそういった事柄を題材としたお話を描いていきたいと思っています。
その中に非日常が起こるような作品を描いていきたいです。どんな漫画家になりたいか、については「あっ、この人知ってる!昔から漫画描いてるよね」と、好きじゃなくても名前は知っている、絵は見たことがある…、と言われるような漫画家になりたいです。
「ずっと漫画を描いている人」と世間に認識されたいし、実際に描き続けたいですね。
これからも応援しています。
あと、おこめ君!会いたかったよー!! ※黒猫おちびの一生が楽しみすぎて…
関連サイト
ウィキペディア:Wikipedia
インタビュー記事:uzurea.net
Twitter:浦部はいむ@urabehaimu
Twitter:頭割れ太郎君@skerutonm
Instagram:無@mu2021718
note:浦部はいむ@urabehaimu